金銭の一定額の支払を内容とする公正証書として代表的なものとしては、金銭消費貸借契約公正証書と債務弁済契約公正証書とがあります。
債権者が債務者・連帯保証人に確実に金銭の支払をしてもらいたいと思う場合、公正証書に金銭の支払を怠った場合は強制執行を受けてもやむを得ない旨の内容(強制執行認諾文言)を盛り込んでおけば、裁判によらずに直ちに強制執行できます。
- 金銭消費貸借契約
金銭消費貸借契約は、貸主が金銭を貸し渡し、借主が借入金の返済を約束することによって成立する契約です。
- 債務弁済契約
債務弁済契約とは、債務者が債権者に対して、種々の契約や不法行為等によって生じた債務を確認し、その履行を約束する契約です。
- 債権者・債務者間の契約書がすでにある場合には、公証役場にメール又はファックスでこれをお送りください。必要があれば、当公証役場においで頂きご説明をうかがいます。
債権者・債務者間の契約書がない場合には、債権者・債務者で合意内容を確認の上、合意内容の分かるメモ等を公証役場までご持参ください。
合意確認事項
- 債権者、債務者、連帯保証人の有無
- 金銭消費貸借契約の場合には貸付日と貸付金額 、債務弁済契約の場合には債務の発生原因
弁済すべき債務は、当事者間に他の債務と誤認混同するおそれがない程度に特定する必要があります。 通常は、債務の性質、発生時期、回数等によって特定しています。
- 元金の返済方法
- 一括全額弁済か、分割払か(たとえば、平成〇年〇月から平成〇年〇月までの間、毎月○日に金○○円ずつ支払う) 支払期日を明確にする必要があります。
- 銀行口座に振り込む方法にするのか、その他の方法にするのか
- 利息の有無と支払方法
- 利息がある場合には、年利何%にするのかその支払期日はいつかを明確にする必要があります。
- なお、元利均等払いの場合には、途中で不払があった場合に、残元金が分かるように、各返済期日に支払額・支払額の元利の内訳・残元金の金額の記載された一覧表を作成していただく必要があります。
- 遅延損害金の有無
- 期限の利益の喪失条項を定めるのか否か
- 強制執行認諾文言を公正証書に記載するのか否か
- 印鑑証明書等の必要書類も 事前に公証役場までメール又はファックスでお送りいただき、現物は公正証書作成の日(公証役場で公正証書に署名する日)にご持参ください。
- 公証人が公正証書案を作成し、公証役場からメール又はファックスでこれを送付し、ご確認いただきます。
- 公証人と債権者・債務者との日程調整をし、決定した日時に債権者(本人又は代理人)・債務者(本人又は代理人)が公証役場に来ていただき署名・捺印していただきます。
-
契約当事者本人(法人の場合は代表者)が公証役場で署名・捺印できる場合
- 本人が個人の場合
- 印鑑登録証明書及び実印、もしくは、
- 運転免許証、パスポート等の顔写真入りの公的機関発行の身分証明書のいずれか1つ及び認印
- 本人が法人の場合
- 法人登記簿謄本又は登記事項証明書(いわゆる資格証明書。具体的には、「現在事項全部証明書」「履歴事項全部証明書」「代表者事項証明書」のいずれか1つ)
- 法人代表者の印鑑証明書
- 法人代表者の代表者印
上記の個人の印鑑登録証明書、法人の印鑑証明書、法人登記簿謄本、登記事項証明書等は公正証書作成の日から3か月以内に発行されたものであることが必要です。
-
契約当事者本人(法人の場合は代表者)が公証役場で署名・捺印できず、代理人が代わって署名・捺印する場合
- 契約当事者各本人の身分証明書等
- 本人が個人の場合は、印鑑登録証明書
- 本人が法人の場合
- 法人登記簿謄本又は登記事項証明書(いわゆる資格証明書。具体的には、「現在事項全部証明書」「履歴事項全部証明書」「代表者事項証明書」のいずれか1つ)
- 法人代表者の印鑑証明書
- 本人から代理人への委任状(個人の実印又は法人代表者の上記b.A.と同一の代表者印を押印したもの)
委任状に決まった書式はありませんが、委任する内容が明確に記載されていることが必要ですので、以下のサンプルをご参考に委任状を作成してください。
- 債権者からの委任状サンプル
WORD版 PDF版 別紙添付が必要(添付方法は下記に記載)
- 債務者からの委任状サンプル
WORD版 PDF版 別紙添付が必要(添付方法は下記に記載)
- 債務者及び連帯保証人からの連名による委任状サンプル
WORD版 PDF版 別紙添付が必要(添付方法は下記に記載)
上記委任状サンプルを参考に作成した委任状を1ページ目にして、2ページ目以降に具体的な契約条項を記載した書面(契約書の写し又は公証役場から送付された公正証書案文)を合わせて綴じ、これらを一体化させ、文書の改ざんや差し替えを防ぐために、委任者全員が、1ページ目の委任状を含め各ページの間に実印で契印(割印)をする必要があります。各ページの間に契印(割印)をする仕方がよく分からない方は、各ページに契印(割印)するサンプル例のページをご覧ください。
また、枚数が多い場合には、各ページの間の契印(割印)を簡略化して、袋綴じをして綴じ目に契印(割印)をする方法もあります。袋綴じの方法がよく分からない方は、袋綴じの方法のページをご覧ください。
- 代理人の本人確認資料
- 運転免許証、パスポート等の顔写真入りの公的機関発行の身分証明書のいずれか1つ及び認印もしくは、
- 印鑑登録証明書及び実印
上記の個人の印鑑登録証明書、法人の印鑑証明書、法人登記簿謄本、登記事項証明書等は公正証書作成の日から3か月以内に発行されたものであることが必要です。
- 基本手数料
基本手数料は、手数料令により、貸付金額を目的額として算定します。
目的の価額 |
手数料 |
100万円まで |
5,000円 |
200万円まで |
7,000円 |
500万円まで |
11,000円 |
1000万円まで |
17,000円 |
3000万円まで |
23,000円 |
5000万円まで |
29,000円 |
1億円まで |
43,000円 |
1億円を超えるときは、超過額5,000万円ごとに、3億円までは13,000円ずつ、10億円までは11,000円ずつ、10億円を超えるものは8,000円ずつ、それぞれ加算されます。
- 正本・謄本の費用は枚数(1枚につき250円)によって決まり、1通の枚数×250円×2通が正本・謄本の費用となります。
- 公証役場で保存する証書原本については、A4横書きの場合4枚までは無料ですが、これを超えるときは、超過枚数×250円が加算されます。
- その他金銭消費貸借契約の場合は目的価額に応じて印紙代がかかります。なお、債務弁済については200円です。
金銭消費貸借及び債務弁済契約公正証書の強制執行について詳しく知りたい方は、強制執行のための送達と執行文付与のページをご覧ください。
Q1.金銭の授受の前に、金銭消費貸借契約公正証書ができますか?
A.金銭消費貸借契約は金銭の授受があったことにより成立する要物契約なので、金銭の授受がないと諾成的金銭消費貸借契約となり、強制執行認諾文言を付した公正証書を作成できません。金銭の授受がある日に公正証書を作成することをお勧めいたします。
Q2.金銭の貸し借りに関する公正証書をつくりたいのですが、相手方の同意があれば、1人で公正証書の作成ができますか?
A.債権者と債務者とでは利害が対立するので、一方が他方の代理人となったり、1人で双方の代理人となることはできません。債権者・債務者とも、必ず、本人もしくは代理人が公証役場にきていただき署名捺印していただく必要があります。
なお、連帯保証人がいる場合、債務者の代理人が連帯保証人の代理人を兼ねたり、債務者が連帯保証人の代理人となったり、連帯保証人が債務者の代理人となることはできます。